「そろそろ別動隊が城を攻撃しているところでしょうか」
出陣の際、ついてくると言ってきかなかったアーマンドが望遠鏡を覗き込む。
今城にいるビアンカには味方がいなくて可哀想だが我慢してもらうほかない。
「そうね。もうすぐ夜明けだから、そろそろ準備を……」
辺りが明るくなってきた。計画通りに行けば、今頃別動隊が城から敵を追い立てはじめているはず。
いつ敵と向かってもいいように、早いうちから準備万端にしておこう。明日香がそう思った矢先だった。日が昇った途端、霧が晴れた。
「えっ!!」
そこにいた誰もが目を見張った。霧で覆われていた目と鼻の先に、カルボキシル軍の旗がひらめいている。赤く塗った甲冑を着こんだカルボキシル軍が、怒涛の勢いで明日香たちに向かってきた。
「そんなバカな!」
いつもは冷静なアーマンドが悲痛な声で叫んだ。
「読まれていたか」
バックスが眉をひそめ、ぼそりと零す。
「やられた……」
明日香も呆気に取られた。
(やっちゃった。これじゃ、川中島の戦いと一緒だ)
武田信玄と上杉謙信が激突した川中島の戦い。武田軍は別動隊を上杉軍がいた城に送り込んだ。明日香と同じ策を取ったのである。



