トリップしたら国王の軍師に任命されました。


「武器、弾薬……」

 どの箱を開けても、鉄砲や剣、槍、弓、弾丸や防具などなど。見たことのない珍しい形状のものもある。遠い地から運ばれてきたのだろう。

「結婚祝いにこれを選ぶか。さすがというか、なんというか」

「情勢が不穏になりつつある情報を掴んでいたのかもしれないわね」

 とにかく、助かる。今のシステインにはこれ以上ない祝いの品だ。

「さ、みんな気合入れて。いざ出陣よ」

 明日香は一振り剣を掴んで、立ち上がった。



 ジェイルと明日香率いる本隊は、バックスの隊と合流した。別動隊がプロリン城を奇襲し、敵を追い出してくるのを待つ。

「今夜は霧が濃い。別動隊がこっそり動くのにうってつけだわ」

 とりあえずプロリン城を取り返す。どうやらそこにカルボキシル王……ビアンカの父もいるらしい。バックスからの情報だ。

「交渉に失敗しました。どうぞ罰してください」

 ジェイルが到着するなり、バックスは毅然とした態度で言い放った。

「今有能な味方を失うわけにはいかない。これからの戦いで、名誉挽回してくれ」

 明日香が襲われたことで揺れつつある国内に、これ以上不穏な空気はいらない。ジェイルはバックスに制裁を与える気はなかった。