「国王陛下、王妃さま。私でお役に立てることがあったら、またいつでもお声かけください。王妃さまのおかげで、鉄砲や防具の輸入が盛んになり、だいぶ儲けさせてもらっておりますので」
ジェイルに向かって礼をしたディケーター。同盟諸国がシステインの真似をして鉄砲や軽い防具を買い求めているのは、明日香も知っていた。
「何のもてなしもできなくてすまない。ペーター、彼らに土産を」
「できればシステイン産の酒をいただきたい。うちのやつらは酒が大好きでしてね」
「ああ、好きなだけ持っていけ」
好きなだけ、と言われつつ、常識的に馬車で引ける分の酒を積み、ディケーターは帰っていった。僅か数分の再会だった。
「こんなときじゃなきゃ、ゆっくりしていってもらいたかった。ところで、彼に何を言われていたんだ?」
耳打ちされていたのを、ジェイルは見逃さなかったらしい。
「ん? うん……怪我、お大事にって」
明日香は言葉を濁した。今、国内を動揺させるようなことを言っていいのか、躊躇したからだ。
「やっぱり見抜いたか。さすが海賊の頭領だ」
ジェイルはディケーターが置いていった贈り物の大きな箱を開けた。
「何が入ってるの?」
明日香はジェイルと共にのぞきこむ。その中にあったものを見て、驚いた。



