アクアマリンの瞳にじっと見つめられ、明日香は困り果てた。説明したところで、わかってもらえるだろうか。

「私は、日本という国で生まれ育ちました」

「ニホン。聞いたことがないな」

 ペーターが立ち上がり、丸まった紙を持ってきた。テーブルの上に広げられたそれは、黄ばんだ世界地図だった。

「ニホンはどこだ」

 ジェイルに尋ねられるも、明日香は答えることができない。目の前にある地図は自分の知っている世界地図ではなかった。見たこともない形の大陸が、見たこともない配置で散らばっている。

「ここには載っていないわ」

 明日香は地図を見つめた。そこにある文字は彼女が知っているどの言語とも違っていた。

「載っていない? バカな」

「私だって、わけがわからないんです。家の近くの古墳から穴に落ちたと思ったら、あの山にいたんだもの」

 苛立ちを隠さないジェイルの表情が、明日香を重苦しい気分にさせた。責められたって、真実は変えられない。

「コフン?」

「大昔の豪族のお墓よ。とにかく私は……こことは別の世界から来てしまったみたいなの。そうとしか思えない」

 もう家に帰れないかもしれない。しゅんとうなだれる明日香を、ジェイルは疑惑の眼差しで見ていた。