二人の間に、気まずい沈黙が落ちる。お互いに、何を言えばいいのかわからない。仕方なく、明日香の方から口を開いた。
「恨まれて当然だよね。今まで普通に、まるで友達みたいに接してくれていた状態の方が、不自然だったんだよ……」
言いながら、明日香は泣きそうになってきた。
(こっちにきて、周りが男ばかりで不安だった。ビアンカのこと、頼りにしていたのに……)
誰から見ても完璧な女性だったビアンカ。その笑顔の裏に、あんなに激しい感情が渦巻いているとは。まったくわからなかった自分が信じられないのは、明日香もアーマンドも同じだった。
「敵から見れば極悪人でも、システインではあなたが英雄であることに変わりありません」
「アーマンド……」
「あなたのおかげで助かった命もある。どうか、ご自分を責めないでください」
アーマンドの言葉が胸に沁みて、明日香は余計に泣きそうになった。
「ごめんなさい。あなたの方が辛いよね」
彼は、ビアンカに想いを寄せていたはずだ。あんな彼女は見たくなかったに違いない。そして、元婚約者の存在など、知りたくなかっただろう。
「アスカさま、謝らないでください。あの方に婚約者がいたのは当然のことです。王女なのですから」
「あ……この世界は政略結婚が普通だものね」



