「とりあえず、幽閉という形でどうかしら。彼女の命は交渉の材料になるかもしれないわ」

 バックスに納得してもらえるよう、言葉に気をつける。個人的に彼女に肩入れしていると思われてはいけない。

「ふむ。軍師さまがそうおっしゃるなら。プロリン城はどうしたします?」

 織田信長なら、秀吉あたりを差し向けてボコボコにするだろう。そのあとカルボキシルの王城を攻略し、皆殺しだ。

(でも私は信長じゃないし)

 明日香は我知らず、親指の爪を噛む。こればかりは即決できない。

「これ以上我が領地に踏み入れられぬよう、鉄砲隊で防衛線を張れ。事態によってはそのまま城に攻め込むことができるよう、備えを万全にする。バックス、頼んだ」

 代わりにジェイルが言うと、バックスは「御意」と頭を下げて部屋を出ていった。

「……どうする。このままじゃ終わらないぞ。あいつは真面目だから」

 出ていったバックスのことを言い、ジェイルはため息を吐いた。

「そりゃあ、本当なら反逆なんて許しちゃいけないわ。こっちが他国にもなめられるもの」

 アーマンドが責めるような視線で明日香を見る。彼女は首を横に振った。

「なにも、カルボキシルのひとたちを皆殺しにするなんて言ってない。しっかりお灸をすえつつ、最後に情けを見せた方が、ジェイルの株は上がる」