今のように、平和な生活がいつまでも続いてくれれば。明日香が心の中で願った、そのときだった。

「王妃さま!」

 強くドアをノックする音が部屋に響いた。侍女がびくりと肩を震わせる。

「どうしたの?」

 王妃となった今でも軽く動きやすいドレスに身を包んだ明日香は、自らドアを開けた。

 そこには、見たことのない兵士が跪いていた。青い顔でうつむいている。明日香は尋常でない空気を感じた。

「反乱でございます」

「は?」

「カルボキシルに、プロリン城を落とされました……!」

 明日香は一瞬言葉を失った。カルボキシルは、似非長篠の戦いでシステインに恐れをなし、従属を誓ったはず。

「すぐにジェイルのところへ行くわ」

 うなずく兵士に案内され、明日香はジェイルの元へ向かった。

 ちょうど今から朝食の時間なので、ジェイルは食堂にいた。宰相のバックス、親衛隊長アーマンド、側近のペーターが難しい顔をして座っていた。既に一報は彼らの耳に入っている。

「来たな、アスカ。よし、詳細を話せ」

 明日香がジェイルの隣に座る。彼らは明日香を待っていたようだ。

 震えた声で、さっきとは別の兵士が話しはじめた。よく見ると、彼の衣服はボロボロで血が滲んでいる。応急処置だけが施されていた。