『いいね、その服』

『え?』

『私、洋服選ぶの苦手なの。凌馬君は、いつもオシャレだから』

姉さんは、充分素敵だ。

洋服のセンスは、シンプルで上品だ。

本当に似合っている。

身長は165cmくらいかな?

スリムな体に、少し茶色にそめた長い髪をひとつに束ねている。

自然なゆるいウェーブが、姉さんの魅力を引き出していた。

『こんなの別にオシャレじゃないよ。今度...』

言おうとした瞬間、姉さんに電話が入った。

『ごめん、あの人からだわ』

兄さんからの電話。

僕が、姉さんに言おうとした言葉をさえぎるように電話が鳴った。

そうだよ、言っちゃいけない言葉だった、だから、電話が...


『姉さん、今度一緒に洋服見に行かない?』


そんな大胆なこと...

言っちゃいけなかったんだ。

その言葉を封印して、僕は、兄さんと電話中の姉さんにジェスチャーでお礼を言って、さっと家を出た…

恥ずかしくなったんだ。

姉さんを誘おうとした自分が。

いたたまれなくて...


...また、苦しくなって、ため息をついた。