【バレンタイン&ホワイトデーSS】【番外編】最後の夜に「愛してる」を誓って

「ちゃんと自制します。大事な日の記憶を失くしたくないですもん」

「……昔も、そんなようなことを言っていたな」

「だって、一生の思い出じゃないですか! 好きな人から初めて食事に誘ってもらえた夜、それから、結婚を約束した人とすごす初めてのホワイトデー」

「よくもまぁ、照れもせずそういうことが言えるな」

「京吾が言ってくれないから代わりに私が口に出してるんです」

確かに俺は、キザな台詞なんて滅多なことじゃ言わないし……かろうじてベッドの中で愛してるを囁くくらいか? 余計嘘っぽいな。

「ワインに乾杯しながら『愛してる』くらい言えばよかったか?」

「……雪が降りそうなので、言ってくれなくて大丈夫です。それに……」

彼女にしては珍しく小悪魔っぽい顔つきをして、俺を上目遣いに覗き込む。

「口にしてくれなくても、京吾が私を大好きなことくらい、知ってますから」

随分と言うようになったもんだ。昔は明確な言葉ばかり求めてきた彼女なのに。

やはり指輪は効果てき面だったらしい。今も彼女の左手の薬指には、俺が渡した婚約指輪が輝いている。