【バレンタイン&ホワイトデーSS】【番外編】最後の夜に「愛してる」を誓って

「注文、適当でいいか」

「はい。お任せします」

彼女はわずかに頬を紅潮させて、緊張に肩を強張らせている。

瞳は相変わらずキラキラと期待に満ちていて、ドキドキ、わくわくといった子どもみたいな心境が手に取るようにわかった。

「そんなに硬くなるなよ。ちょっといい飯を食うだけだろ」

「……だって、まさかこんな日に、神崎さんと一緒にお食事できるなんて……それも、こんな素敵なお店で……」

――こんな日。そう、今日はホワイトデーだ。

よっぽどうれしかったのだろう、はにかんだ笑顔を咲かせる彼女に嘆息しながらも、悪い気はしなくて、深く椅子に腰かけながら幸せそうな彼女をしばらく眺めていた。

コース料理のオーダーはシェフに任せて、運ばれてきたワインで乾杯する。

前菜を終えたところで、いつもより彼女の酒のペースが遅いことに気がついた。

「どうした? ワイン、苦手だったか?」

すると彼女は、眉間に皺を寄せ神妙な面持ちで「いえ」と答えた。