* それから時間はあっという間に過ぎ。 「あー、もう帰らないとね」 「……そうだな」 帰る時間がやってきた。 帰りたくないなって、素直に思う。 「じゃあ行くか」 健斗は今日、映画に行くからってわざわざ電車できてくれたらしく、駅までは一緒だった。 だけど、健斗と私の最寄駅は反対方向。 つまり、駅に着いてしまえば離れ離れで。 駅までの帰り道、寂しさのあまり健斗のシャツをそっと握ってしまった。 「……何、そんな顔して」 健斗が私を見て笑う。