桜人「文房具とか、後に残る物の方がいい」


桜舞「へー。じゃあ、そうする。ありがとな」


桜人「ま、俺の勝手な意見だけど」


桜舞「いーや?参考になったよ。それじゃあお返しに」


桜人「?」


桜舞「はいこれ」


桜人「何これ、キーホルダー?」



桜舞が差し出してきたのは
ご当地の格好をした茶色の熊のキーホルダーだった。



桜舞「妹さん、何歳かよく知らないけど、
大体こういうキーホルダーは人気高いらしいよ」


桜人「へー...。桜舞は?」


桜舞「は?」


桜人「桜舞はこういうの、嬉しいわけ?」



忘れそうになるけど、一応、桜舞は女の子だしな。


そう思って聞いてみたけど、
桜舞は虚空を見つめて、ボソッと自分に問いかけるような言い方でこう言った。



桜舞「...どーかな。あんまもらったことないし」



あ、やべ。


地雷...だったか?



桜舞「李利が昔、誕生日に朱里ちゃんからもらってた熊を喜んでたからさ。それで、だよ。
聞けば、李利の知り合いさんも李利に
こういう、キーホルダーをくれるらしいしな」


桜人「朱里ちゃん?」


桜舞「保健医の先生。李利のお兄さんなんだ」


桜人「え、マジで?」


桜舞「あれ、言ってなかったけ」


桜人「あぁ。李利ってどこまでも知り合いとか
血縁関係とかがいそうなのが怖いよな」


桜舞「それは思った」


桜人「でも、ありがとな。助かった」



目を伏せ、フッと含んだ笑みを浮かべてそう言った。