?「桜舞に李利じゃねぇか!どーした!?」



保健室に入った途端に声を荒げる先生。


先生とは思えないほどのチャラさだけど。


銀髪にピアスを付けて、白衣を腰に結ぶ変な格好。



李「いちいち過剰反応ね、アンタ」


?「んな!?妹のくせに、俺よりも大人びていやがって!」


李「アンタがいつまで経っても変わらないからよ」


?「言わせておけばぁ!」



李利が珍しく毒を吐く。


俺は苦笑しながらそのやりとりを見て落ち着いていた。


懐かしいなー。


なんて思いながら。


俺の通う学校の保健教諭、赤城朱里(アカギ シュリ)は
李利の年の離れた実の兄だ。


けど、どっちかって言うと兄、妹ってよりも
姉と弟って言った方が近い気がする。


朱里ちゃんはそれくらい子供っぽいから。



朱「朝からここに来るなんてよっぽどだな、平気か?」


桜「うん。さっきよりかは落ち着いた」


朱「そうか。ならよかったが、原因はあれだろ?今朝の」


李「え、朱里も知ってるの?」


朱「職員室でかなりの騒ぎになってたぜ?
てか、李利、アンタの次は呼び捨てって...。
お兄ちゃんと呼べっていつも言ってるだろー!?」


李「絶対に無理」


朱「なんでだよ!?」


桜「まぁまぁ落ち着きなって、朱里ちゃん」


朱「くぅー...」


李「...騒ぎの元凶が私たちのクラスに転入してきたの」


朱「そりゃまた、苦労なことだな...。
まぁ、あれだけ校門が騒ぎになってたら
教師共も驚くだろうけどな。俺も驚いたし」


桜「ハァ...」


朱「好きなだけここにいろよ。
まだ教室も慌立たしいだろうしな。授業抜けたってよ、
どーせ、桜舞は頭がいいんだからさ」


李「そうしなよ、桜舞」


桜「...うん。1時間くらいここにいることにする。
ごめんな李利」


李「いーよ。じゃあ、教室戻ってるね」


桜「ありがと」



そう言って李利は教室へと戻って行った。


その後ろ姿を見ながら少しばかり申し訳ないと思う。


するとすぐに朱里ちゃんが俺の頭を撫でた。



朱「気にすんなよ、李利だって
気にしちゃいねぇだろーしな。お前は
ゆっくり自分のペースでいいんだよ」



俺の考えていることを見透かしたように
朱里ちゃんは笑顔でそう言った。


ふんわりと優しい朱里ちゃんの笑顔が
俺を包み込んでくれた。



桜「うん。ありがと、朱里ちゃん」



俺は目を伏せて、朱里ちゃんや李利の優しさを
噛み締めながら素直に朱里ちゃんにお礼を言った。