律「ありがとう」



涙ながらに語る律佳の過去。


想像もできない程に律佳は辛かったんだと思う。


だからこそ、何も言えなかった。


何か言ってしまえば、それは嘘のように聞こえるから。


反対に俺の目は素直だった。


溢れて止まない涙が次々にこぼれていく。


律佳は俺を見て、クスッと笑い、その涙を拭った。



律「優しいね、桜舞」


桜舞「ご、ごめ...」


律「謝んないでよ。俺は嬉しかったんだから」



ふふふっと律佳は笑った。


その笑顔は前よりも素直で綺麗で律佳らしい。


俺は頷いた。



律「長々話しちゃったから、遅くなっちゃったね...」


桜舞「そーだな」



気づけば辺りはもうすっかり夜の闇。


なんでこんな遅くなったのかって聞かれそうだな...。



桜舞「そういや、なんで絡まれてたんだよ?」



ふと気になった疑問を律佳に尋ねる。


律佳はさぞかし嫌な顔をすると、うつむいた。



律「徠たちが楽しそうに教え合ってたから、邪魔しちゃ
悪いかなって思って...。ついでに自分の好きなものでも
買って来ようってコンビニに行ったんだけど...。
あいつら、ホントはコンビニの前で堂々と
タバコ吸ってたんだ。周りも迷惑してたみたいで、
何人かが注意してたんだけど、それも聞かなくてさ。
で、俺が通りかかったら、イライラするから付き合えって囲まれたんだ」



クソかよ。



桜舞「災難だったな」


律「ホントだよ」


桜舞「ま、無事だったからよかったけどさ」


律「そーだけど...。桜舞は無事じゃないでしょ」



律佳は痛々しそうに俺の腕を見る。


俺はへらっと笑い、腕を振り回す。



桜舞「へーき。こういうの、慣れってからさ」