俺は捨て子だった。


生まれてからずっと自分と血の繋がっている人間に
会ったことがなかった。


気づいた時には俺と同じような境遇にある子供が
集められている場所にいた。


今思えばそこは児童保護施設だったんだ。


俺は捨てられていることを誰よりも深く理解していた。


だからこそ、もう家族なんていらないって思っていた。


もう捨てられたくなかったから。


少なくともここにいれば多少の不自由があっても
捨てられることは無い。


それでいいって思ってた。


ある日、園長が俺にとある家の養子にならないかって
言ってきたんだ。


その家は両親と病弱だった1人息子がいた。


俺よりも3つ年の上の息子が。


初めて会った時、そいつは俺の手を掴んで笑ったんだ。



『家族になろう!』



って。


初めて言われた。


家族になろう、なんて。


誰にでもあって、俺にだけないものをあいつはくれた。


それから俺はその家で弟として迎えられた。


病弱だった兄ちゃんはあんまり遊べなかったけど、
それでもずっと俺と一緒にいてくれた。


暖かった。


これが家族なんだって思えた。


両親も本物の両親がどういうものなのか知らなかったけど
優しくしてくれてたし、ご飯だってくれてた。


だから何一つとして不自由はなかったんだ。


でも、そんな中、兄ちゃんは死んだ。


俺は悲しかった。


初めて出来た、やっと出来た、俺の兄ちゃん。


神様に奪われたんだって思った。


だから何度も神様を呪った。


けど、兄ちゃんは帰ってこなかった。


そして、俺はまた捨てられた。