燻る紫煙

何秒、何分。

いったいどれくらいの時間が立ったのだろうか。

私はあの人の腕の中で、胸に顔をうずめ、

安心しきった子供のように目を閉じていた。

「もうこんな時間。帰らなくちゃね」

あの人が私の耳元でそうささやく。

「ん……」

少し名残惜しいけど、私は満ち足りた気持ちでいっぱいだった。

身支度を終え、バッグを手にした私に、

「ごめん、1本だけ吸わせて。」

ソファに腰かけたあの人が、

煙草に火をつけながら。

あの人がふぅーっと吐き出した白い煙を見つめたまま、

私は、

あの人にこう問いかけた。

「また、会えるかな……」

あの人は、

もう一度煙を吐き出して、

「うん。また、会いたいって思うよ」

そう言って灰皿からこちらに目線を移した。

私は少し微笑んで、

また満ち足りた気持ちでいっぱいになった。

また会える。

これからも会える。

やっと、

やっと私にも幸せが訪れたんだ。

と、

そう、

あの時は無知にそう信じていた。