燻る紫煙

今日は、昨日みたいに雰囲気に流れてしまってはいけない。

そう思ったはずなのに。

でも。

断れない。

離れられない。

私が下を向いて、そう考えこんでいると、

その気持ちを察してか、

あの人が私の肩を抱く手がぐっと強くなった。

もう後戻りはできない。

もっと一緒にいたい、そう望んだのは私なんだから……

ホテルの部屋。

グレーのカバーがかけられたベッドの端に、

私とあの人が腰掛ける。

あの人は、私のあごを持ち上げるようにして、

そっと唇を寄せる。

やわらかい、優しい、優しいキス。

そのままあの人の手は私の腰へ、そして後ろに倒され

あの人の舌を感じながら、

私の体を優しくなぞる、あの人の指を感じ、

そして、

全身であの人の体を感じる。

昨日と同じ。

何も覚えていないはずなのに。

あの人の体はしっかりと覚えている。

いけないことをしている。

頭ではそう考えるのに。

もっと、もっとずっとこうしてつながっていたい。

そう思ってしまう。

あの人は、

私の気持ちを分かってくれているのだろうか。

果ててしまった後も、強く、強く、私を抱きしめ続けてくれていた。