燻る紫煙

しばらくの沈黙が、

あの人の動揺を物語っているようだった。

そして同時に、肯定を意味していた。

「もう、会わないほうがいいみたいね」

私がそう言う。

実際、本当にそう思っていたわけではない。

そう尋ねることで、

私はあの人を試したかったのかもしれない。

あの人の気持ちを。

あの人がどのくらい私のことを想っていてくれているのかを。

「この前の出張の時からなんだ、あいつの態度が急変したのは」

淡々とあの人が語りだした。

「沙耶加の存在も、もう気づいてるみたいで」

そんなことを聞きたいわけではなかった。

ただ、

私との関係をどうしたいのか、それが知りたかった。

「もう、終わり……ってこと?」

そう問いかける。

すると、

「いや、ちょっと待って。明日、明日必ず時間を見つけて会いにいくから。話し合おう。」

あの人自身考えがまとまっていないんだ、

そう感じられた。

それに、

「明日は土曜日でしょ。こんな状況で家を出れるの?」

あの人の言うことは不可能に思えた。

「絶対、少しでも時間作るから」

いつも落ち着いているあの人の、必死な姿を目にするのは少し抵抗があった。

でも、

「分かった」

最後に、

もう一度だけ信じてみよう。

そう思った。