燻る紫煙

それから、あの人がベッドの上で煙草を吸っている間、私は余韻にひたりながら、ただ側に寄り添って、あの人の肩に触れていた。

久しぶりに一緒にいる時間。

片時も離れていたくなかった。

聞きたいことはたくさんあった。

奥さんに気づかれていなかったのか。

これからも私と会うつもりなのか。

でも、

あの人が私の元へ戻って来てくれた。

それだけで、私は幸せだった。

「今度の金曜日、出張で名古屋に行くんだ。ホテルも取ってあるから、よかったら来てくれないかな」

私がそんなことを考えていると、あの人がふとそう言う。

突然のことに、私は少しとまどい、

「大丈夫なの?」

そう尋ねる。

「出張は1人で行くし、大丈夫だよ。仕事終わるのは遅くなりそうだけど土曜は少し時間取れるし、なにより……沙耶加と一晩中、一緒にいたい」

あの人からそんな言葉を聞けるなんて、

私と一緒にいたい、

そう思ってくれているのがすごくうれしかった。

私は、あの人の目を見つめ、笑顔でうなずいた。

あの人の、一挙一動に、

私の心は動かされている。

私は、その時、幸せの絶頂にいるかのように感じていた。