燻る紫煙

彼の真剣なまなざしに、私は彼の私への好意を見て取った。

きちんと返事しなければならない。

そうは思うものの、

私の心の中であの人の影がちらついている。

どうして。

どうして、消えてくれないの。

忘れることはできないの。

まっすぐこちらを見ている、彼の純粋な目。

その目を見つめているとふと、

そんな彼を利用して、あの人を忘れようとしていた自分に、強い罪悪感を覚え、私は、思わず言っていた。

「ごめんなさい。忘れられない人がいるの。ほんと、ごめんなさい……」

彼が言葉を発する前に、私は車を飛び出した。

なんて、

なんて私は最低な女なんだろう。

私は、なんてことをしているんだろう。

自分でも、何がしたいのか分からなくなっていた。

最初は新しい男性と新しいスタートを切ろうと考えていた。

でも、

あの人からの電話があって。

あんなにひどい人なのに、

また声が聞きたいと思う自分がいて。

そんなどうしようもない私に、好意を持ってくれている男性を目の前にして、私は自分を恥ずかしく感じた。

私は、一体どうしたいんだろう。

どうしようもなく、私はその場に立ち止まった。

すると、

スマホがまた振動していた。

もしかして。

私は急いでディスプレイを確認する。

直感は当たっていた。

あの人からだ。

このタイミングで。

二度目は迷うことなく、私は通話をタッチした。

私はどうにかしてこの自分の混乱した気持ちを、整理したかった。