燻る紫煙

その日は、最初は食事だけ、という話だったけれども、結局一日一緒に過ごし、最後はディナーも一緒にすることとなった。

私たちは街の中心部から少し離れた、

和食の創作料理のお店でお酒を飲みながら、楽しく会話をしていた。

そうしながら、

少しずつ、

私はあの人を重ねることなく、彼を正面から見るようになっていた。

彼は、本当に周りをあったかい気持ちにさせてくれる、素敵な人。

私も、彼に幸せにしてもらいたい。

あの人を失った傷を癒してほしい。

そう考えていると、バッグの中でスマホが動いた。

バッグの外には出さず、振動を繰り返すスマホのディスプレイを確認すると、

着信中、大西啓介

という表示がイルミネーションと共に目に入った。

あの人からだ。

こんな時に……

今さら。

でも、なぜ。

なぜ、電話をかけてきたんだろう……

また、会いたいっていうお誘いの電話?

それとも、もう終わりにしようという別れの電話?

あの人の、

意図が気になる。

それよりも、

あの人の、

声が聞きたい。

でも……

さまざまな思いが頭をよぎる。

私はしばらく、バッグの中のスマホのディスプレイを眺めたまま、思案していた。