燻る紫煙

「あんまり、俺を困らせないでほしい」

少しの静寂の後、あの人が発した言葉は、冷たいものだった。

真っ直ぐ私にぶつけられた言葉を受け止め、

私は、

しばらく何も考えることができなかった。

腕はあの人を抱きしめたまま、

こんなに私はあの人の近くにいるのに、あの人の心はとてもとても遠く感じる。

あの人の心に、

いくら手を伸ばしても、

届かない。

すっと体の力が抜けて、

私はあの人から身を離した。

あの人は、

一度も私の顔を見ることはなく立ち去った。

私は、

その場に崩れ落ち、

泣いた。

止めようと思っても、

涙は決して止まることはなく、

ただ流れ続けた。

あの人を思って泣くことは、

これが初めてかもしれない。

今まで、絶対泣かないと自分に言い聞かせてきた。

私は、自分の気持ちをずっと抑えてきた。

けれど……

それが、

せきを切ったように、

涙と共に溢れ出し、

私の中から全て流れ出ていった。

もう、

あの人への思いを、

断ち切る時が来たのかもしれない……