燻る紫煙

今回であの人との関係は終わりにしよう。

何度そう思ったことだろうか。

あの日の夜以来、

何度あの人と体を重ねあったかは覚えていない。

こんな、人に知られてはならないような関係を続けたって、

私は決して幸せになれない。

ただ、私はあの人の都合のいい時に会っていて、利用されているにすぎない。

そう考えていた。

だけれども、

自分の部屋に一人でいると、自然とあの人のことを考えてしまう。

会いたいと思ってしまう。

そして、あの人に会うと、あの人が欲しいと思う自分がいる。

私はあの人の体から離れられない。

あの人は私の心をとらえて離さない。

もう、

私は後戻りできないところまで進んでしまったのだ。

私の目の前にいるのはあの人で、

あの人の目は私だけを見つめ、

あの人の口は私だけに語りかけ、

あの人の指は私だけに触れ、

あの人の体は私だけを抱く。

私とあの人の間には誰もいない。

誰も。

確かに、あの人には奥さんと娘がいるのかもしれない。

しかし、

私を中心とするこの場には、

2人は存在していない。

それでいい。

私はあの人のことを想い、

あの人の体を感じているだけでいい。

いつの間にか、

私はそう思うようになっていた。