燻る紫煙

その日。

いつものようにあの人は、

窓際のソファーに座って煙草を吸っていた。

私はベッドの上で、半分体を起こして、何かに怯え不安がる子供のように布団を頭までまといあの人の横顔を眺めていた。

そして、

あの人が最後の煙を吐き出した、そのタイミングに話を切り出した。

「ねぇ、クリスマスのね、夜は……一緒に過ごせるの?」

口にした言葉は、思いのほかストレートで、

胸が少し締めつけられる感じがした。

あの人は、私の声が聞こえているのかいないのか、くわえていた煙草の先を灰皿に押しつけて、火を消した。

そして、こう言った。

「一緒に、過ごしたいの?」

どうして当たり前のことを聞くんだろう。

どうしてすぐに答えてくれないんだろう。

あの人はわたしと大事な日を過ごしたくないんだろうか。

それとも過ごせないんだろうか。

そう考えると、

悲しくて、悲しくて、

胸が痛くなった。

私がうつむいて、涙をこらえていると、

ふわっと髪をなでられるのに気がつき、上を向くと、

「ごめんごめん。クリスマスの日は、まだ何時に仕事終わるかわからないんだ。仕事終われば電話するから、待っててもらってもいいかな?」

あの人が微笑んでいた。

私は返事をする代わりに、

軽くうなずいた。

変な心配するんじゃなかった。

疑うんじゃなかった。

あの人は、ちゃんと私のことを思ってくれている。

そう、信じないと……