燻る紫煙

それから。

私たちは度々会うようになった。

そしてその度、体を重ねあった。

私とあの人が会う日は、必ず、あの人が早く仕事が終わる日。

ディナーをして、その後ホテルへ。

私の部屋に招くこともあった。

でも、

決して週末に会ってくれることはなかった。

好きだと言われたわけでもない。

付き合ってほしいと言われたわけでもない。

何か、

きっと何かあの人は隠していることがある。

そう確信しているのに、私は問いただすことができなかった。

問いただすことで、この関係が終わってしまうのは嫌だ。

たとえ、体の結びつきだけでも、

それでも私はあの人のそばにいたい。

もう、離れられない。

会社からの帰り道。

一人、急に吹き付ける風に身震いして、コートのボタンを閉めた。

街はすっかり赤や緑のイルミネーションでいっぱい。

そうだ、もうすぐクリスマスだ。

「沙耶加!」

後ろから呼び止められ振り返ると、麻里がいた。

「イルミネーションきれいだねぇ。そういえば、沙耶加、クリスマスどうすんの?」

そう尋ねられ、私は言葉につまる。

クリスマスの予定は、まだ白紙だった。

「啓介さんにどっか連れていってもらうんでしょ?」

麻里には、一応あの人と付き合うことになったと言ってある。

実際の関係については、……言えない。

「うん、まあね」

私の頭の中に、クリスマスをあの人と一緒に過ごしたいという気持ちはあった。

ただ、

その話を全くしてくれないあの人に、

切り出すのが怖かった。

でも、

これがチャンスなのかもしれない。

あの人の真意を聞き出すのに。