「そういえばさ・・・あのファンタジー映画の最新作公開されるんだね」

「そうなの!受験が終わったら絶対見に行きたいんだー」

あのファンタジー映画とは私が初めて出会った映画のことだ。
年明けに最新作であり完結作である映画が公開される。


「じゃあまずは受験を乗り越えなきゃね。お互い受験がんばろうか」

「うん」

そういえば明日からは午前授業。こうやって二人で残るのも年が明けるまではお預けだ。

(なんだろう、さみしいな・・・)


「そろそろ帰ろう、駅まで送るよ」

「え、反対方向だし悪いよ」

「気にしなくていいから。もう少し映画の話しよ?」


そういわれて嬉しくなる自分がいた。
自分ももう少し一ノ瀬くんと話したいって思っていたから。


帰り道は最近ずっと一人だったから、誰かとこの道を歩くのも久しぶり。
横に誰かがいるのがこんなに暖かくて安心するなんて、初めて気づいた。
多分これは横にいるのが一ノ瀬くんだからというわけじゃないだろうけど。


「一緒に残るのも今年は今日で最後だったね」

「うん、今日は送ってくれてありがとう」

「こちらこそ、話聞いてくれてありがとう」


改札口で定期券をかざし駅の中に入る。角を曲がる直前に振り返ると、まだ一ノ瀬くんがこちらを見ていた。
なんだかそれが彼氏に見送ってもらっているみたいで恥ずかしくなった。