氷のような彼は陽だまりのように暖かい


「無事目が覚めたのね。よかった。」

その人は同性の私が惚れそうになるくらいの柔らかい笑みで私を包んだ。

「おうどん作ったんだけれど、食べられそう?」

出汁の匂いが食欲を誘った。

「いただきます。」

まだ暖かい汁を一口飲めば、じんわりと舌に染みた。

「おいしい、です。」

「よかったわ。ゆっくりでいいから沢山食べてね。」

どれほど飢えていたのか、あっという間に平らげてしまった。

空になった皿を片付けに女の人が席を立った後、私を助けた男は口を開いた。

「体力まだ完全に回復していないだろうし、暫くはこの家に留まるといい。」

「助けて貰った挙句、そんなお世話になることは出来ないです。暖かい食事に暖かい布団を貸していただけただけで充分すぎます。」

この家に長く居れば迷惑になってしまうだろう。

今までは暖かい食事に布団など有り得なかった。

それをこの人は私に与えてくれて、もうそれだけで充分だ。

それに、この人は私をあの場所から助け出してくれたのだ。

これ以上迷惑などかけられない。