氷のような彼は陽だまりのように暖かい


「女」

気づけば鉄格子の向こう側から数人の男がこちらを見ていた。

そのうちの1人と目が合った瞬間、時が止まったのではないかと錯覚する程に吸い込まれた。


「辛かったな。」


あの女の可哀想に。とは打って変わった労るような声音に心が溶かされた。


「た…すけ、て…」


あの時、誰にも届かなかったこの声を自分自身また聞くことになるなんて思わなかった。

届かないなら言う意味は無いと諦めていた。

だけど今は、この人に届いてほしい。


久しぶりに涙で顔が濡れた。


「誠(まこと)、車を用意してくれ。真(しん)は本家に風呂と着替え、飯の用意を頼んでくれ。」

「「承知」」

男は指示をした後、鉄格子を蹴破った。
鉄格子が飛んで行った方を驚きの目で見ていれば肩にスーツの上着をかけられた。

「お前の声は届いた。」

その低い声は心地いいほどにじんわりと心に染みた。

それから抱き上げられたところまでは覚えているが、緊張の意図がほぐれたのかそこからの記憶はない。

ただ覚えてるのは、この男の温もりがとても心地よかったことだけだ。