今夜、月に煌めく頃に【短編】

大天狗は声を押し殺して私の手の甲に顔を埋めた。

私はずっと見ないふりをしていた。

妖たちにも心があると言うことを隠して自分を守ろうとしていた。

天狗の涙に触れた私の心は風が吹いたように爽やかだった。

大天狗はシワのついた頬に流れる涙を拭うと少し悲しそうな顔をして顔を上げた。

その時だった。

「ことは終わりましたか?大天狗殿」

と言う低くて威圧的な声が森中に響いた。

そして突風が吹き私は目を瞑った。

目を開けると目の前には大柄で九本の尾っぽを生やし赤く縁取ったツリ目、彼と同じアサガオの刺繍が入った着物。

「父さん」

「修行がなっていないようだな」

そう言われると彼はムスッとした顔をした。