今夜、月に煌めく頃に【短編】

「治ってる」

「もちろん。彼女は天狗の里の名医じゃからのう」

「そうなの、ありがとう」

「いえいえ、医者として当たり前のことをしただけですので」

と言ってその女性は柔らかい笑顔でにこりと笑った。

「大天狗殿、さっきの天狗は一体?」

九尾は真剣な面持ちで大天狗に聞いた。

「あぁ、あの子か」

大天狗は一瞬悲しそうな顔で俯いた後「はぁ」というため息を吐いて話し始めた。

「あの子は天狗の里の宮中で小さい頃から働いておったのじゃ。あの子と同じ年の次期大天狗がおったんじゃがその子が最近亡くなってのう」

「亡くなった?」

「死因不明じゃ。じゃから次期大天狗に嫉妬して殺したんじゃないかという根も歯もない噂が流れてのう。宮中であの子に対するいじめが始まったんじゃ」

「酷い」