今夜、月に煌めく頃に【短編】

そう言った瞬間に天狗の姿が目の前から消えた。

見ると向こうに離れた場所まで吹き飛ばされていた。

そして私の目の前には、艶やかな翼を生やし木の杖をついたお爺さん天狗とこちらもまた艶やかな翼を生やした細身の美しい女性が立っていた。

「大天狗殿」

九尾が絞り出した声を聞いて大天狗と呼ばれた天狗はちらりと九尾に目をやり私を見ると、女性に向かって「この子の手当てを」と言うと天狗の方へ向き直った。

女性は私に手を当てると黄色い光を出して私に「ゆっくり呼吸していてくださいね」と優しい声で言った。

大天狗は懐から天狗の持っている羽団扇より一回り大きい羽団扇を出すと天狗に向かってその羽団扇をかるく振った。

すると見る間に天狗の着物は破けて切り傷ができ天狗は悲痛な叫びをあげた。

大天狗は天狗を見つめながら「お前さんは信じてたんじゃがのう。すまんかった」と呟いた。

その瞬間一度だけ天狗の瞳が赤く戻った気がしたが大天狗の落とした雷によって天狗は跡形もなく消えてしまった。

そして大天狗は天狗の消えてしまった灰を見つめながら少し悲しそうな顔をした後九尾のもとへ歩いていった。

そして羽団扇を一振りすると九尾の傷はみるみるうちに治っていった。

「九尾ならこれくらいでもすぐ回復するじゃろう」

というと九尾を引っ張り起こし私の方へと向かって歩いてきた。

私の目に来ると大天狗は女性に向かって「どうじゃ」と聞いた。

気づけば左の腕の痛みはなくなっていた。

見ると左腕のえぐれた腕は綺麗に治っていた。