今夜、月に煌めく頃に【短編】

「なんだあの姿」

九尾は倒れて生き絶え絶えの私を抱きかかえながら天狗の姿を見て驚愕した。

天狗の姿は先ほどとは見てもわからないほどに変わっていた。

目は黒く瞳の奥では血走った火が燃えており、爪も牙も長くなっていた。

ツノが長く生え、艶やかだった漆黒の翼は荒れ果てたボロボロの灰色へと変わっていた。

その姿のまま天狗は九尾にかかって行った。

九尾は私を端っこに寄せると羽団扇を振り回す天狗の攻撃を避けていた。

だが後ろを向いて飛んでいたため前にあった大きな木に気がつかずギリギリで体を引っ掛けてしまった。

そのタイミングで天狗は九尾に刃を振った。

「ぐあぁぁ」

悲痛な叫びをあげながら九尾は地面へとおりた。

そのまま天狗は動きの鈍った九尾に攻撃を続けた。

「がはっ。あぁぁぁぁぁぁぁ」

九尾の悲痛な叫びが私の耳にまで届いた。

「.....やめ.....て」

私がそう言うとまるで九尾のやられる姿を周りに見せつけようとするかのように羽団扇を振って周りの火を消した。