散りゆく花泥棒と夜明けを待つ花嫁

「結婚、やめようよ。しちゃだめだよ。やめてよ」
 省吾の目に大粒の涙が浮かんだ。
「どうしても結婚するって言うなら、俺は犯罪者になる。ここにちーちゃんを閉じ込める」
「誘拐犯がそういうなら、怖いなあ。どうしようかなあ」
「……結婚なんて、俺は絶対に嫌だ。するなら、別の人か、俺にしてよ!」
 とうとう溢れてきた涙が優しくて、温かくて、綺麗で、気づけば私も省吾の顔が滲んでみえた。
 携帯の画面に映る彼が、よく見えない。
 不動産会社に勤めていると言っていた。花屋のおじちゃんに、店を閉じて、駐車場にしようって何度も帰省しては丸め込もうとしている。
 彼はとても悪い人だった。
 確かに駅に近いおじいちゃんの花屋は、駐車場にしたら儲かるのかもしれない。
 そんな彼とおじいちゃんの間にしゃしゃり出て、根性が腐っている彼と散々喧嘩して、……私の考えを認めた時には彼は私を好きになってくれていたらしい。
 同情だったのだろうか。
 監視だったのだろうか。
 彼の気持ちを断ったら、せっかく花屋を守れたのに危うくなるかもしれない。
 打算だったのかもしれない。

最初は純粋な気持ちじゃなかった。