悠斗はあたしが背筋を伸ばして正座し直すのを見届けると、コクリと頷き前を向いた。

ほどなく本堂に入ってきた住職の姿を確認するなり、悠斗はスクっと立ち上がり、住職に駆け寄った。

(よわい)70を越えた住職はここ数年で、足腰が弱っていると見え、足取りがおぼつかない。

時々ふらつくこともある。

悠斗はそっと住職の手を取り、肩を貸し1段高くなった導師の席まで歩く。

座椅子に敷かれた座布団を整えると、住職の腰に手を添えゆっくりと座らせた。

「凛子さん。お(ぐし)、乱れていますよ。御仏への朝のご挨拶です。身嗜(みだしな)みはきちんとなさってくださいね」

「ヒィィィーーーーィ」

条件反射で思わず声が出そうになり、口を押さえる。

「さあ、お経が始まりますよ」

悠斗は澄まし顔で言い、住職の後ろに正座した。

「凛子さん、貴女はこちらです」