目線を悠斗の下から上になぞる。

整髪剤で程よく立たせた髪、緩めたネクタイ、どうみてもホストにしか見えない。

「いや、客のシャンパンがかかった」

「たいへんだな」

「まあな」

「僧侶がホストとはな」

聞きたいことは他にあるはずなのに、でてきたのは皮肉でしかなかった。

「寺だけではやっていけないからな」

「そんなにヤバいのか?」

「何処の寺も神社も似たようなもんだろ。昔みたいに熱心な信者はいないからな」

「それで茶道に華道、書道、写経、週末には塾まで面倒みてるのか?」

「微々たるもんだ。お前には関係ない。さっさと休め」

悠斗はあたしに微笑みかけると、しづしづと廊下の突き当たりへ向かった。

朝になれば、悠斗は疲れた様子を尾首(おくび)にも出さず、颯爽と御勤めをこなすのだろう。