妙に寝つけないのは悠斗のせいだ。

あたしはトイレを出ると、部屋に戻る廊下を歩きながら思った。

悠斗の華道指南は、(まさ)に手取り足取りだった。

悠斗の手直しで、あたしの生けた駄作がみるみる品のある作品に変わっていった。

息が触れるほど近く密着した悠斗の丁寧さが甦り、ドキドキが止まらない。

自分の部屋の前まで来て、ふと悠斗の部屋に目を向ける。

廊下の突き当たり、悠斗の部屋から明かりが漏れている。

ーー丑の刻、2時前だぜ。あいつ、まだ起きてるのか?

中の様子を窺おうと、目を眇め、耳を澄ます。

物音1つ聞こえない。

あたしは、さらに部屋の様子を探ろうと、硝子格子に両手をかけ、顔まで密着させて耳をそばだてた。

ーー何も聞こえない。まだ帰ってないのか

硝子格子と障子で二重になり、部屋の中の様子はわからないが、人のいる気配がない。