でも、兄貴が死んで少しして、俺は兄貴の気持ちを知ってしまった。
横浜で一人暮らしをしていた兄貴の部屋を、整理しに行った時だ。
母さんにやらせるのはさすがに酷だから、俺が引き受けた。
電気はもう止まってて、やたら蒸し暑い部屋の中、俺は兄貴の荷物をダンボールに詰めていく。
でも、ダンボールは額から零れる汗でどんどん濡れるし、Tシャツまでびっしょり。
人間、無駄に汗を掻くと、やたら疲れるもんだ。
俺はついに作業を投げ出して、兄貴のベッドにどっかり腰を下ろした。
それにしても、本が多いな。
何気なく目をやった本棚の上に、その箱は不自然に置かれていた。
みかもの月っていう、仙台の萩の月とよく似た、栃木のお菓子の箱。
俺はその箱が気になり過ぎて、中身を見てみることにした。
あまりにも懐かしくて、それに、甘いものなんてそんなに食べない兄貴がみかもの月の箱を持っていたことが不思議だったから。



