帰りに俺は、奈々ちゃんの下駄箱を探した。
お別れのプレゼントをしたかったから。
もし奈々ちゃんがもう帰っていても、夏休みに部活で学校に来た時か、最悪登校日には見つけてもらえる。
そう思ったけど、奈々ちゃんの下駄箱にはまだ靴があった。
兄貴はちゃんと、奈々ちゃんにお別れできてるんだろうか。
きっとできないんだろうな、と奈々ちゃんの話をしている時の兄貴の赤い顔を思い出して、一人で笑った。
奈々ちゃんは『鈴木くん』のことが好きだ。
だから、できれば話しかけてあげて欲しい。
てか最後くらい、勇気出して話せよ。
でも俺だって、最後まで本当のこと言えなかったんだから、兄貴のこととやかく言えない。
とんだヘタレ兄弟だ。



