初恋をもう一度。【完】


1学期が終わる一週間前の放課後、俺は部活をサボって第2音楽室に行った。

奈々ちゃんに会えても会えなくても、ここに来るのは今日で終わりにしようと思ってた。

奈々ちゃんに会えたら、さよならを言う。

会えなかったら、その役割は、彼女と同じクラスで最後まで一緒にいられる兄貴に任せる。

なんて決意していた俺は、今回もやっぱり神様が味方してくれて、奈々ちゃんに会うことができた。

そういえば俺、今まで第2音楽室行って100%奈々ちゃんに会ってる。

これが運命じゃなかったら、もはや彼女の方が俺を探してるとしか思えない確率。

俺を探してる? どんな理由で?

……たとえば、俺のことが好きで、俺に会いたいとか。

まあ、そんな都合のいいことはないと思うけど。

もしあったとしても、その好意は兄貴に向いてるもので、たぶん俺じゃないし。

奈々ちゃんとの最後の時間も、俺は『鈴木湊人』として過ごすことを選んだ。

奈々ちゃんは誰から聞いたのか、転校することを知っていた。

転校の話をしたら、なんか暗いムードなってしまったから、俺は奈々ちゃんにピアノを弾いてもらうことにした。