「ふざけんなよ。田崎と過ごしたのはお前だろ?俺じゃねんだよ」
「……俺じゃねーよ、兄貴だよ。奈々ちゃんにとっては」
「うるっせえなあ! だからほんとのこと言えっつってん」
「なんだお前達、珍しくケンカしてんのか?」
兄貴の言葉は、いつの間に帰ってきたのか、リビングの入り口に立っていた父さんの声に遮られた。
「父さん、2人に大事な話があるんだ。悪いけど、ちょっとケンカ中断できないか?」
こっちだって今、すごく大事な話をしてるのに。
でも俺達は、渋々ケンカを中断して、父さんの話を聞くことにした。
「……急な話なんだけどな、父さん、東京に転勤することになった。まあ、だから……お前達にはほんと申し訳ないけど、転校してもらうから」
「「……は?」」
俺と兄貴のリアクションは、全く同じだった。
こんな所まで、そっくりじゃなくていい。



