初恋をもう一度。【完】


俺の話を全部聞き終えた兄貴は、 最初とても驚いた顔をしていたけど、急にニカッと笑った。

「そんなの、ほんとのこと言えばいいじゃん」

俺が兄貴のふりをしたことを責めもしない。

そんな兄貴だから好きだし、尊敬してる。

だから、奈々ちゃんは譲ってあげるよ。

「いや、今さらいいよ。つーか、俺が兄貴の代わりに仲良くなっといたからさ、あとは兄貴が頑張りなよ」

俺がそう言ったら、兄貴の顔から笑みが消えた。

「は?」

兄貴がものすごく怒っていることは、すぐにわかった。

だってこんな声、聞いたことない。

今まで、兄貴とケンカしたことはもちろんある。

でも、それは小さい頃の、どうでもいいくだらないケンカの話だ。

兄貴が俺に対して、こんな風に怒りを露にしたのは、たぶん初めてのことだった。