初恋をもう一度。【完】


「あのさ、俺と奈々ちゃんの関係を説明する前に、ひとつだけいい?」

「ん、なに?」

「兄貴って、奈々ちゃんのこと好きでしょ」

そう言った途端、兄貴の顔はゆでダコみたいに真っ赤になった。

やっぱりか。

わかりやす過ぎて、ちょっと面白い。

兄貴が奈々ちゃんのこと好きなら、もっと早く全部兄貴に話せばよかったな。

そしたら、こんなに苦しまないで済んだのに。

……いや、そんなことないか。

俺は最初から、奈々ちゃんのことが好きで好きでしょうがないから。

「そっかあ。俺達、顔も性格も食べ物の好き嫌いも、本当によく似てるけど、好きな女の子まで一緒なんだね」

「……えっ、理人りとも!?」

兄貴は赤い顔のまま、さっきよりも目を丸くさせた。

「うん、好きだよ。でも、俺はもういいや。兄貴が頑張りなよ」

「は? なんで? 意味わかんないんだけど」

「……俺、兄貴に謝んなきゃだし」

「いや、だから全然意味わかんねーって」

「うん、だから、最初からちゃんと説明する。俺と奈々ちゃんが知り合ったのはね……」

俺は、兄貴のふりをした情けない俺の物語を、ゆっくりと語り始めた。

この、バカみたいに不毛な初恋を終わらせるために。