初恋をもう一度。【完】


ついでに、奈々ちゃんが吹奏楽部で、ティンパニを担当していることを知った。

フルートとか吹きそうなイメージなのに、あんな大きな太鼓を叩いていて驚いた。

ティンパニを叩く奈々ちゃんは、なんかかっこよかった。

演奏してた曲は、優雅でちょっと切ない主旋律が印象的で、俺はすごく好きだと思った。

そして、きっと奈々ちゃんもこの曲好きだろうな、なんて勝手に思った。

だって俺と奈々ちゃんは、音楽の好みがたぶん似てると思うんだ。


奈々ちゃんのことを、もっと知りたい。

いや、そんな贅沢は言わないから、もう一度、会って話がしたい。

会って、彼女に笑顔で名前を呼ばれたい。

その『鈴木くん』が、たとえ兄貴の名前でも。

たとえ俺が、『鈴木すずき理人りと』が、彼女の中に存在できなくても。