初恋をもう一度。【完】


合唱コンクールの日、俺は久しぶりに奈々ちゃんの姿を見た。

もしかしたら、久しぶりに見たらそんなに可愛くなくて、この気持ちも冷めるかもしれない、なんて思ってたけど。

伴奏者として呼ばれた「田崎奈々」という名前を聞いた瞬間、心臓がドクンドクン鳴り始めた。

舞台の上で恥ずかしそうにお辞儀をする奈々ちゃんを見たら、嬉しすぎて顔がにやけちゃって、もう完全に好きなやつだと再認識した。

「瞬。俺、やっぱ奈々ちゃん好きだわ」

隣に座ってる瞬にそう言ったら、呆れた顔で「だろうね」と返された。

奈々ちゃんの伴奏は、すごく上手だった。

繊細で、優しくて、俺は彼女のピアノもとても好きになった。

伴奏と言えば、俺も伴奏をして、壇上で名前を呼ばれた時に、奈々ちゃんに気づかれないか少し不安だった。

でも鈴木なんてたくさんいるし、眼鏡かけてるし遠目だし、伴奏者の顔なんていちいち見ないだろうし。

たぶん大丈夫だろう。