初恋をもう一度。【完】


あれから兄貴は何も言ってこない。

どうやら俺の予想通り、奈々ちゃんは兄貴に、ピアノや第2音楽室の話をしていないらしかった。

やっぱりそんなに親しくないんだ。

なんとなくほっとした。


同じ学校にいても、学年が違うと教室の階も違うから、校内で奈々ちゃんに会うことは全くなかった。

奈々ちゃんに一目でいいから会いたい。

何か用事を作って、兄貴の教室に行くという手もあるけれど、兄貴のふりをしてしまった以上、とても気まずい。

それに、ストーカーみたいでキモい。

部活が忙しいから、第2音楽室にも行けない。

奈々ちゃんに会いたい。

なんで俺は、奈々ちゃんと同じ年に生まれなかったんだろう。

なんで俺は、兄貴じゃないの?