毎日放課後になると、あの第2音楽室に行きたくてたまらなくなる。
「あー、奈々ちゃんに会いてー」
そこそこ人がいなくなった教室で、机に突っ伏して、思ったことを口にしてみたら、同じクラスの瞬しゅんに頭を引っぱたかれた。
瞬は俺達兄弟の幼馴染で、家も斜め前、幼稚園からずっと一緒だ。
親友とか言うと気持ち悪いけど、たぶん親友。
ちなみにフルネームは恩田瞬だ。
瞬には1つ上の兄貴、恩ちゃんこと恩田一真がいて、うちの兄貴とめちゃくちゃ仲がいい。
なんで恩ちゃんが苗字呼びで、瞬が名前呼びになったのかは全然覚えてない。
「いてっ」
「バカなこと言ってないで、早く部活行くぞ」
そう言われて、渋々席を立ち上がる。
「で、奈々ちゃんて誰?」
「うーん……天使?」
「理人、前々から思ってたけど、お前やっぱ頭おかしいべ?」
「やっぱってなんだよ」
そんなバカなことを言いながら、結局第2音楽室には行かずにちゃんと部活に向かった。
でも、奈々ちゃんのことが頭から離れない。
離れてくんない。



