触り出したら弾きたくなって、俺はピアノの椅子に腰かけた。
楽譜もらったし、伴奏曲の練習でもしようかな、でもとりあえず指慣らしになんか弾こうかな。
俺は少し考えて、最近気に入っているプーランクの『エディット・ピアフを讃えて』を弾き始めた。
プーランクは、モーツァルトの再来だとか言われたりもしたらしい。
確かに、切ないシャンソンを歌うようなメロディと、その歌に合わせて踊っているようなリズムの融合は、悪魔的に天才だと思う。
なんて考えながら弾いていたら、
「……鈴木、くん?」
突然、女の子に声をかけられて、びっくりしてピアノを弾く手を止めた。
いつの間に入ってきたんだろう、ドアは閉めておいたはずだけど。
全然気づかなかった。



