「田さ………な、奈々ちゃん!」

終業式の日、俺は帰ろうとした奈々ちゃんを呼び止めた。

ずっと呼びたかった、下の名前。

彼女を「奈々ちゃん」と呼ぶのは、きっと最初で最後だ。

でもこれは、俺の言葉じゃない。

彼女の『鈴木くん』……理人の言葉だ。

「えーっと…… あの…………またね!」

でも口から飛び出したのは、俺の本音だった。


またね。

いつかまた会いたいな。

たとえ俺が、奈々ちゃんにとっての『鈴木くん』じゃなくても──。

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