もし俺が奈々ちゃんに「好きだよ」と伝えても、きっとそれは正しく伝わらない。
奈々ちゃんにとっての『鈴木くん』は、俺じゃなくてアイツ、理人(りと)だ。
生まれて初めて、アイツになりたいと本気で思った。
俺だって、奈々ちゃんと話したかったし、一緒にピアノを弾いたりしたかった。
でもわかってる。
それができなかったのは理人がどうこうじゃなく、俺がへタレなせい。
俺はどうしたら、俺自身として奈々ちゃんに気持ちを伝えられるんだろう……。
懸命に考えてたら、ひとつだけ思いついた。
ピアノだ。
奈々ちゃんは理人のピアノを知っていても、俺のピアノは知らない。
俺がこの顔から出すこの声で「好きだよ」って言うよりも、よっぽど俺自身の言葉として伝わる気がする。
ピアノが大好きな彼女のために、俺はピアノを録音してプレゼントしようと思った。
さっそくピアノに向かって、奈々ちゃんのために何を弾こうと考える間もなく、指が勝手にベートーヴェンの『月光』を奏で始めた。
月光は、想い人に送るラブソング。
控えめで柔らかくて、でもときどき凛とした表情も見せる奈々ちゃんは、月がとてもぴったりだ。
何度も録音して、いちばんいい出来のものをCD―Rに落とした。
奈々ちゃんにとっての『鈴木くん』は、俺じゃなくてアイツ、理人(りと)だ。
生まれて初めて、アイツになりたいと本気で思った。
俺だって、奈々ちゃんと話したかったし、一緒にピアノを弾いたりしたかった。
でもわかってる。
それができなかったのは理人がどうこうじゃなく、俺がへタレなせい。
俺はどうしたら、俺自身として奈々ちゃんに気持ちを伝えられるんだろう……。
懸命に考えてたら、ひとつだけ思いついた。
ピアノだ。
奈々ちゃんは理人のピアノを知っていても、俺のピアノは知らない。
俺がこの顔から出すこの声で「好きだよ」って言うよりも、よっぽど俺自身の言葉として伝わる気がする。
ピアノが大好きな彼女のために、俺はピアノを録音してプレゼントしようと思った。
さっそくピアノに向かって、奈々ちゃんのために何を弾こうと考える間もなく、指が勝手にベートーヴェンの『月光』を奏で始めた。
月光は、想い人に送るラブソング。
控えめで柔らかくて、でもときどき凛とした表情も見せる奈々ちゃんは、月がとてもぴったりだ。
何度も録音して、いちばんいい出来のものをCD―Rに落とした。



