──俺は今日、全く予想だにしなかったことを二つも聞かされる羽目になった。

ひとつめは、俺と奈々ちゃんにまつわる、驚愕の真実だ。

衝撃的だった。

とにかく驚いて、でも納得ができた。

そっか、だから奈々ちゃんは俺を見てたのか。

……俺を?

死ぬほど切なくなった。

そこに追い討ちをかけるように、もうひとつの話が舞い込んできた。

転校だ。

父さんの転勤で、東京に引っ越すことになった。

うちが転勤族だなんて聞いてない。

俺は栃木生まれの栃木育ちで、生まれた時からずっとこの家に住んでいる。

それに母さんのピアノ教室もあるし、引越しなんて考えもしなかった。

まあでも、転校するって決まったもんは仕方ない。

奈々ちゃんのことも、転校するんだからもう考えても仕方ない。

せっかくこの間ショッピングモールでばったりあって、一瞬だけどピアノの話できたのに。

……いや、でも。

あんな時間だって、きっと意味がないんだ。

俺が奈々ちゃんと同じ教室で過ごした日々に、意味なんて何もない。


ねえ、奈々ちゃん。

奈々ちゃんにとっての『鈴木くん』って、一体誰なの?